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第23回梓会出版文化賞受賞出版社梓会出版文化賞(株)二玄社 賞状 記念品 金五拾萬円 梓会出版文化賞特別賞(株)地人書館 賞状 記念品 金弐拾萬円 (株)教文館 賞状 記念品 金弐拾萬円 出版梓会第4回新聞社学芸文化賞(株)リトル・モア 賞状 金弐拾萬円 労苦の結晶・大作の競い合い―第23回梓会出版文化賞選考を終えて木田 元 第23回の梓会出版文化賞の選考がおこなわれましたが、今年は各社が長年努力を結集してきた労苦の所産がそろって結実したということらしく、大作が競い合い、選考会の議論もそこに集中しました。慎重な討議の末、出版文化賞も特別賞も、誰もが納得できるところに落着いたと思います。 出版文化賞に決まった二玄社は1953年の創立、書道関係の専門書に長い実績をもつ出版社です。今回の選考対象図書『大書源』は、その二玄社が創立50周年記念出版として30年をかけて作った書法字典、約7100の見出し親字の下に21万余の字例が集められています。これまで最大の書体字典でも15万字だったそうですから、その規模がうかがえましょう。全3巻に索引冊、それにDVDと書道史年表が附けられた大冊です。 3500年に及ぶ中国と日本の資料から、篆・隷・楷・行・草の書体が集められており、「魚」という字だけでも118例、見るだけでも楽しい字典です。附録のDVDを使って、たとえばの行書だけで「行雲流水」という軸を作って遊ぶといったこともできるそう。これだけ大きく専門的な字典が、刊行後半年で4度増刷したというのも納得できます。この受賞は、文句なしに決まりました。 特別賞に決まった地人書館も1930年の創立、自然科学系の長い出版実績をもつ老舗出版社です。今回の選考対象図書は『天文学大事典』です。すばる望遠鏡や各種探査機を駆使して、この4半世紀間に日本の天文学は飛躍的に発展しましたが、本書はその成果を踏まえ、130人の天文学者と天文普及教育関係者から成る編集委員会が10年をかけ、5000項目の天文学用語を解説した本格的な事典です。月探査機かぐやが、月面から見た地球の姿を伝えてくるいま、ふさわしい受賞ではないかと、これもすんなり決まりました。 特別賞に決まったもう1社の教文館は、なんと1885年、明治18年の創立、日本に現存するなかでももっとも長い歴史をもつ出版社ではないでしょうか。言うまでもなくキリスト教関係の出版に大きな実績をもち、この分野では他の追随を許しません。哲学を専攻する私など、さんざんお世話になってきました。今回の選考対象図書も、アウグスティヌスの『告白録』の新訳、本邦初の『マイモニデス伝』(ヘッシェル著)、ペリカンの大著『キリスト教の伝統』、ファン・デル・フリートの『解説 ユダの福音書』、どれをとっても10年がかりと言えそうな苦心の飜訳ばかりです。 しかし、圧巻は『宣教師ニコライの全日記』9巻(中村健之介監訳)でしょう。むろん神田ニコライ堂のあのニコライさんです。彼は幕末から明治の末まで半世紀間日本に滞在し、克明な日記をつけていました。関東大震災で焼失したと思われたこの日記30冊がレニングラードの古文書館に保管されているのを、1979年に中村さんが発見し、まずロシア語版を刊刊行した上、次いで19人の訳者を集め、30年がかりで邦訳されました。キリスト教布教史だけではなく、明治史の研究にとってもその価値ははかり知れません。この受賞も満場一致で決まりました。 今回ははからずも、領域こそ異なれ、いずれも長い歴史をもつ3社が実に息の長い努力を重ねてようやく完成した大作ばかりが授賞の対象になりました。おかげで、スピードと軽便さだけがもとめられているかに見える現在の出版界にあっても、いまだに出版の本領が忘れられていないことを改めて教えていただいた気がします。なお、第4回新聞社学芸文化賞には、写真集や文学書を中心に出版している株式会社リトル・モアが選ばれました。受賞各社のみなさん、おめでとうございます。 第23回梓会出版文化賞「大書源」を発行して株式会社二玄社 代表取締役社長 黒須 雪子 書の歴史は3000年と永いものですから、その取材や資料集めや文字の分類は遺跡の発掘にも似ています。出版は地道な作業の連続です。ぶ厚い読者層の信頼と期待に応えるためには、大変な根気と気の遠くなるような時間と人海戦術を組む緻密な編集作業が必要で、1冊の本、ひとつのシリーズの完成までに5年、10年或いはもっと要することもあります。そんな作業をこつこつと積み重ねながら気づけば50余年続けてきました。いつの間にか史上最多の字例が編纂され、編集部には膨大な資料が蓄えられ、そして社は史上類をみない資料の宝庫となりました。こんな作業はまだ際限なく続きますが、書というものの普及を企図する小社の仕事は、まだ緒に就いたばかりです。 第23回梓会出版文化賞を受賞して梓会出版文化賞特別賞 歴史の水脈から株式会社教文館 代表取締役社長 渡部 満 創業以来122年、キリスト教の専門書出版という狭い道を歩んで来ました。一方では、宗教書という特殊な需要に応える出版物を刊行していますが、他方、それが広く日本の社会や文化に貢献できる形は何か、ということも問いながら企画を心がけてきたつもりです。 受賞の対象となった『宣教師ニコライの全日記』は40年に及ぶ布教の記録であると同時に、明治期の民俗誌、日露交渉史の一端を示すもので、むしろ今後の研究が期待されます。このような形で評価していただいたことに感謝しています。日本におけるキリスト教の受容とその成果を問い直し、また2000年に及ぶキリスト教思想史の深くて広い水脈に根ざした出版活動に励みたいと思います。 梓会出版文化賞特別賞 著者と読者の架け橋として株式会社地人書館 代表取締役社長 上條 宰 弊社は創業以来自然科学書一筋に出版活動を続けてまいりました。中でも天文雑誌・書籍を通じて、天文学の普及活動に関わりを持ち、専門家と天文ファンの架け橋という役割を担ってきたつもりです。本年、企画より10年をかけ日本の天文学者・天文教育普及関係者130余名に執筆いただいた『天文学大事典』を刊行いたしました。 著者と読者、業界の方々に支えられ、地道に出版活動を継続してきたご褒美として、この度の梓会出版文化賞特別賞をいただけたものとたいへん感激しております。今後もこの賞を支えに著者と読者をつなぐ黒子としていっそうの出版活動に励みたいと思います。たいへんありがとうございました。お礼申し上げます。 第4回出版梓会新聞社 常に挑戦者でありたい株式会社リトル・モア代表取締役社 孫 家邦 1989年の設立以来現在まで、写真集、画集、文芸書、実用書、デザイン、音楽本と、種々雑多な分野に足を踏み入れてきました。そのどの場においても、現実世界との現在的な接触を保ち続け、今ここで動き出していることへの感応性を鈍化しないよう心がけて参りました。それはつまり、いつまでも若さにとどまること、小さな驚きを受けた瞬間のささやかな感情を忘れないことだと考えています。そして自らが面白いと思う企画をどうしても本にするという熱意こそが、1冊1冊の本の出発点であると考えます。1つ所にとどまらず、常に挑戦者でありたいと思っている我々にとって、今回いただいた賞は大変励みになるものであり、心より感謝いたしております。 選考委員(敬称略) |
