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―歴史が竹内を呼び覚ます〈戦後思想〉を読み直す―
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竹内好著・丸川哲史・鈴木将久編 各2100円(税込み) 日本経済評論社
竹内好は、戦後の中国文学のあり方を決定付ける多くの仕事を残し、さらにアジア(特に中国)と日本にかかわる率直かつ大胆な発言によって、じつに大きな存在であり続けていた。竹内の中国とのかかわりは実に苛烈なもので、戦時中は兵士として中国戦線に派遣されていた時期もあった。戦後日本において、竹内の中国研究は大きな参照枠ともなったが、同時に彼独特の日本批判というものも、丸山真男、石母田正などの戦後思想の巨星とともに一つの星座を形作るまでの影響力を持っていたと言える。ただその一方で、彼の多岐にわたる仕事の本質がどこまで理解されていたのか、いまだに定まった評価が与えられていない観もある。「竹内は右翼である」とか「竹内は中国を理想化した」などといった簡単な「批判」では、竹内は乗り越えられないであろう。(中略) 1950年代・60年代を通じた竹内の活動は、結果的には実を結ばなかったように見えたし、少なくとも竹内もそのように感じていた節がある。それは、66年の時点で受けたインタビュー「予見と錯誤」の中で、例えば「今は日本民族は滅亡したと思っています。それはまた将来は再生する可能性はあるんだけども、現状は亡国の状態だと思いますね」といった、屈辱感に満ちた感情の吐露にとっても察知され得る。 このような当時の竹内の心の奥底は、じつに計り知れないものである。ただここでの「亡国」と言ったややパセティックなものの言い方は、形式としての「独立」ではなく、実質的な独立に値する「独立」でなくてはならないと述べた「国の独立と理想」への自己応答であるようにも読める。つまり現に、その後も日本は、太平洋の向こうの軍事超大国に対して「独立」しているようには全く感じられない状態にあるのだから。竹内の残した「亡国」という言葉は、ある思想家個人に宿ったものである以上に、幾度も戦後日本の主体性をめぐる論議の急所をえぐり続け、存在的な感情のポイントを示しているのではないか、と今でも思う。(後略)
日本経済評論社 http://www.nikkeihyo.co.jp/
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