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―飛鳥の大地に眠る蘇我氏の真実―
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遠山美都男著B6判 2940円(税込)ミネルヴァ書房( この本のページ )
言うまでもないことだが、古代史の人物評伝には史料的制約という致命的な困難がつきまとう。蘇我氏四代もその例外ではない。
本書をお読みいただければ、お分かりのように、蘇我氏四代のうち、二代目の馬子と三代蝦夷に関しては、極めて例外的なことに、その人間性を窺うことのできる史料が残されている(それによれば、彼らはいずれも実に敬愛すべき人物だ)。それに対し初代稲目と四代入鹿の人物像を窺うことは殆ど不可能である。それに加えて蘇我氏の場合、王権に敵対したという拭いがたい負のイメージがあるために、それを一枚一枚丹念に剥がし、その実像に迫るのは至難の業と言ってよい。(中略)
蘇我氏は元来、王権・大王家にとって潜在的な対立物、手ごわい抵抗勢力であって、それゆえ、ついには王権簒奪、大王家に取って代わるという野心をあらわにするに至ったと見なされてきた。さすがに近年では、蘇我氏が本気で王権簒奪を企てていたと考える研究者は少なくなってきたようだ。それでも蘇我氏が本質的に王権の対立物で、頑強な抵抗勢力であったという点については、今日なお十分に批判・克服されているとは言いがたいと思われる。(中略)
本書でも述べたように、蘇我氏がもともと王権の対立物で、巨大な抵抗勢力だったという根強い見方は、蝦夷・入鹿父子が滅んだのを機に、王権によって蘇我氏から回収された権限や使命が、かつて蘇我氏によって強奪されたものだったとする「解釈」によって生まれ、定着したと考えられる。そして何よりも、王権の確立にその生涯を尽くしたとされる中大兄王子(天智天皇)の手によって蘇我氏が滅ぼされたという一点を強調してとらえた結果、蘇我氏は王権の対立物・抵抗勢力という評価が決定的になったと言うことができよう。
ともあれ、本書が抜本的な蘇我氏の「復権」と「名誉回復」をふまえて、古代政治史全体を読み直していく作業の一里塚になれば、望外の喜びである。
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