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―南原繁の言葉を継ぎ日本のいまを問う―
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立花隆編 2310円(税込み) 東京大学出版会( この本のページ )
2006年8月15日に東大安田講堂で開催され、大反響を呼んだ「8月15日と南原繁を語る会」。その記録集がまとまった。当代一流の知識人たちからのメッセージが詰まっている。 政治哲学者・南原繁は、その弟子・丸山眞男に比べれば、知名度ははるかに低いといえるだろう。本書の編者である立花隆氏は、この南原に注目し、自らが中心になって「8月15日と南原繁を語る会」を企画。その内容と、南原の主要演述を収めた本書『南原繁の言葉』は、格好の「南原入門」でもある。 立花氏は、『天皇と東大』(文藝春秋)の執筆過程で旧制東京帝国大学最後の、また新制東京大学最初の総長であった南原の言葉に出会った。南原は、新憲法や教育基本法制定にも深くかかわり、数々の演説や論文を通じて、敗戦で茫然自失の状態だった国民に再生を呼びかけた。その言葉は、国民に勇気と希望を与え、「戦後日本の精神的礎石」(立花氏)ともなった。 もうひとつ、立花氏が「語る会」と本書を企画するきっかけになったことがある。それは、いま、という時代の風景だ。『天皇と東大』では、戦前の日本社会が急激に変化していった状況を描いているが、立花氏は憲法改正などの動きが現実のものとなってきたいま現在の日本でも、戦前のような国民意識・感情の急転回が起こりつつあるのではないか、という。 こうした時代の変化に、どう対処すべきか。私たちは未来の社会を考えていくうえで、あらためて「戦後」を問い直すべきではないか。そのために、戦後の出発点で大きな役割を果たした南原の言葉に立ち返ってみようではないか――。「語る会」開催までの詳細は本書に詳しいが、立花氏のこうした考えに、大江健三郎氏、辻井喬氏、佐々木毅氏、姜尚中氏、高橋哲哉氏らがそろって共感した。 編集者として「語る会」の準備段階からかかわったが、出演者が著名人ばかりとはいえ、南原を知る人が多くない現実を考えると、参加希望者の数はそこそこだろうと予想していた。ところが、ふたを開けてみると、安田講堂の定員の倍、2000人超の方々から参加申込みが集まった。 つまり、当日会場に入れなかった方々も多数いらっしゃったわけで、その分、出版を待ち望んでいるという声も、かなり前から寄せられていた。 本書はできれば若い世代にも読んでほしいと願っている。第1部「東大の1945年8月15日と南原繁」は貴重だ。実際に1945年8月15日、東大キャンパスにいて、天皇の玉音放送を聴いた石坂公成氏と細谷憲政氏の体験談。また、東大が戦前は日本軍に、戦後はGHQに接収されそうだったとき、それを阻止するのに貢献した父の姿について語った石井紫郎氏の証言。若い世代にこそ、ぜひ知ってほしい事実である。 本書では、南原の演述や論文の後に立花氏の解説を置いた。南原の言葉は、表現や用語が昔のものであるため、読みやすい文章ではない。したがって、立花氏の明快な解説が先にあった方が読者には親切かもしれないが、あえて南原の言葉を先にした。それは、まずは読んでみて、文章のダイナミズムを感じてほしい、と考えたからだ。わからなくても読んで、それから解説を読み、内容を理解し、もう一度、南原の言葉を読む。その作業はきっと、彼の言葉の力を感じるのに役立つのではないかと思う(南原の言葉が持つダイナミズムについては、本書で辻井氏が解説してくれている)。 「語る会」の開催からちょうど半年後に刊行された本書は、すぐに増刷が決まった。会の最後で、立花氏は「南原の言葉を核として、これから考え続けてほしい」と呼びかけた。本書にはその材料が詰まっている。読者にとって日本社会の未来を考える手がかりとなれば幸いである。 東京大学出版会 〒113-8654 東京都文京区本郷7-3-1東大構内 Tel03(3811)8814 Fax03(3811)6958 http://www.utp.or.jp/
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