こうした国際的な「進化ブーム」の火付け役の一端となったのが、本論文集『マキャベリ的知性と心の理論の進化論――ヒトはなぜ賢くなったか』(原題"Machiavellian Intelligence――Social Expertise and the Evolution of Intellect in Monkeys, Apes, and Humans")です。従来、ヒトの知性の進化は道具の使用によってもたらされたという学説が有力でした。
既に述べたように原著は様々な反響を巻き起こしましたが、その辺りの経緯とその後の研究の展開については、一九九七年に同じ編者によって出版された"Machiavellian Intelligence II――Extensions and Evaluations"に詳しく書かれており、これについても今秋刊行の予定で現在、翻訳の編集作業を進めています。人類学や心理学はもとより、・生物学、認知科学、哲学、進化論、経済学等、人間の「知性」と「進化」をめぐるあらゆる分野に関心を持つ人にとって、本書の翻訳はまさに待ち望まれていたものであると自負しております。本書の出版がわが国における研究や議論の進展への一助となれば幸いに思います。