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文学の力を再認識する
この本の注文は下記の草思社ホームページから
アンリ・トロワイヤ著 小笠原豊樹訳 四六判 『サトラップの息子』『クレモニエール事件』各1680円(税込)、『石、紙、鋏』1995円(税込) 草思社
1911年生まれのトロワイヤは現在も旺盛な創作活動をつづける現役作家である。しかしなぜか日本では、彼の小説作品は長年省みられなかった。いまあらためてその衰えを知らぬ筆力に、文学の力を再認識する。
見過ごされてきた傑作を名訳で堪能する
アンリ・トロワイヤ――その名に『女帝エカテリーナ』『バルザック伝』などの評伝を思い起こされる方も多いだろう。
しかしトロワイヤの本領は、やはり小説作品にある。日本では、一九三八年のゴンクール賞受賞作『蜘蛛』を福永武彦が翻訳し、「小説のお手本」と絶賛。その後、いくつかの中編が翻訳されたが、澁澤龍彦訳による短編集『共同墓地』(一九五七)を最後に、なぜか日本では小説作品が省みられることはなかった。
その間、トロワイヤは異例の若さでアカデミーフランセーズ入りし、齢九十三になる今日まで欠かさず作品を発表しつづけている。その散文としての端正さはもとより、物語の巧みさ、芸術性の高さには全く衰えが見られない。
このたび、文学本来の力に満ちた質の高い彼の作品群の中から、一九七〇年代以降の三編を厳選、小笠原豊樹の名訳でお届けする。久しぶりに小説を堪能した、という満足感をかならずや味わえるはずだ。
自伝的物語に秘められた小説家のたくらみ
『サトラップの息子』は革命に揺れるロシアからフランスへ家族とともに亡命してきた少年レフ・タラソフが主人公だ。トロワイヤの本名である。
パリで再会を果たしたレフと友人ニキータは、小説を書こう、と意気投合。題は『サトラップの息子』。荒唐無稽な思いつき、次々繰り出される「盛り上がり」。だが小説作りの試みは唐突に中断される。ニキータの行方は、『サトラップ』の続きは――。そして二人の少年に訪れる運命の皮肉。
自身を実名で描いていても、私小説の枠には収まらない。小説家らしいたくらみが凝らされた傑作だ。
謎解きと心理描写の微妙な均衡が物語を運ぶ
『クレモニエール事件』は、妻を殺したとして十五年の刑に処せられた父と、無実を信じる娘マリ-エレーヌの物語だ。
娘は父の冤罪を晴らすため、青春の全てを賭けて司法と闘う。世紀の冤罪裁判で勝利を手にし、マスコミの寵児となった父と娘。だが父親は無気力に沈み、部屋に引きこもる。娘は、弁護士との遅ればせの恋に現を忘れる。しだいに軋み始める、父と娘――。
巧みな心理描写から生の愚かさを浮きぼりにする。その筆運びの冴えは物語巧者トロワイヤの真骨頂と言っていい。
三角関係を描く筆致のテンポのよさとイキのよさ
そして『石、紙、鋏』は、ゆがんだ三角関係をテンポよく描く。
絵を描き、子猫を拾い、行くあてのない少年の面倒を見る。限りなく心優しい同性愛者アンドレの穏やかな日常は、一人の青年オレリオの登場により崩壊する。優しさと打算、愛情と憎悪、欲望と奉仕とが交錯する息づまる日々。
アンドレと女友達サビーヌ、そしてオレリオの決して均衡のとれない三角関係を軸に、人間の猥雑さを見事に描き出した作品だ。
「伝統的」な小説に真の新しさと革新が潜む
トロワイヤ文学がある時期から紹介されなかったのは、通俗作家との誤解もあっただろう。たしかに彼の作風はいささか保守的に見える。しかしトロワイヤ自身が言う。「〈伝統的〉な小説と呼ばれるものは、実は、それに先立つ作品の一歩前を歩いているのです」
奇を衒うことなく、虚構の魅力を限界まで追いつめる。小説を読み、文学を味わう愉悦はそこにあったはずだ。今回の三作は、トロワイヤ文学が正しく評価される契機となるだろう。
08.04.21 『台頭する中国の草の根NGO』
08.03.21 『フェルメールの秘密』『ルソーの夢』『レオナルドの謎』『ゴッホの魂』
08.02.21 『原典現代中国キリスト教資料集』
08.01.21 『エウクレイデス全集』[全5巻]
07.11.21 いまなぜ信金・信組か
07.09.21 『百人一首大事典』
07.08.21 『世界がキューバ医療を手本にするわけ』
07.07.21 (1)『いのちってなんだろう』 (2)『自分ってなんだろう』
07.06.21 『10代の心と身体のガイドブック』
07.05.21 新自由主義
07.04.21 大学での学び方―「思考」のレッスン―
07.03.21 南原繁の言葉
07.02.21 『吉野裕子全集』
07.01.21 藤沢周平に学ぶ―人間は、人生は、こうありたい……―
06.11.21 『ブラックバスを退治する』
06.09.21 「私を忘れないで」とムスリムの友は言った
06.08.21 『プロカウンセラーが読み解く 女と男の心模様』
06.07.21 憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本
06.06.21 復刻版 大宇宙の旅
06.05.21Dr.金田一&柴田理恵のことば診療所
06.04.21脱アイデンティティ
06.03.21農業技術事典NAROPEDIA
06.02.21アメリカの連邦財政
06.01.21舞台一阪神淡路大震災】全記録
05.11.21国際政治事典
05.09.21自然と人間リーディングス
05.08.21子ども図書館をつくる
05.07.21戦後史大事典
05.06.21愛する人がアルツハイマー病になった時
05.05.21子どもの英語学習
05.03.21マンガ 出張先は北朝鮮
05.02.21現代農業
05.01.21ナラティヴの臨床社会学
04.11.21「ひろさちやの祖師を読むシリーズ」全6巻
04.09.21安房直子コレクション全7巻
04.08.21写真でみせる回想法
04.07.21臨床心理学全書 全十三巻
04.06.21マキャベリ的知性と心の理論の進化論
04.05.21『サトラップの息子』『クレモニエール事件』『石、紙、鋏』
04.04.21夏目漱石原稿「道草」全三巻
04.03.21写真ものがたり 昭和の暮らし 全5巻
04.02.21育ちゆく子に贈る詩(うた)
04.01.21いきものをまもるシリーズ1 コウノトリのふるさと
03.11.21《花の詩画集》 花よりも小さく
03.09.21ダイナミック・メディシン 全七巻+別巻 完結
03.08.21大和の古墳I
03.07.21水をめぐる人と自然
03.06.21定本 手塚治虫の世界
03.05.21変わる家族 変わる食卓
03.04.21新英和中辞典 第7版
03.03.21餓鬼一匹
03.02.21魂の錬金術
03.01.21(図説)世界の歴史(1)「歴史の始まり」と古代文明
02.12.21耳をすまして
02.09.21ドイツの生涯学習
02.08.21星空散歩ができる本 南半球版
02.07.21仏教美術事典
02.06.21一日一書
02.05.21「現場」のちから
02.04.21検証―なぜ日本の科学者はむくわれないのか
02.03.21誰か死ぬのを手伝って
02.02.21アイデンティティとライフサイクル論
02.01.21認知意味論のしくみ
01.11.21(シリーズ身体とシステム)第1期全6冊
01.09.21国鉄・JR 列車名大事典
01.08.21ミステリー・リーグ