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初めての総合的な仏教美術の事典
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中村元・久野健監修 B5判 34,650円(税込) 東京書籍( この本のページ )
仏教美術には多くの人をひきつける魅力がある。今日残る作品や遺構は、地域・時代・民族によって仏教の受容・理解のしかたが様々であったことを示している。アジア全域の仏教美術を俯瞰できるこの事典が、仏教美術理解に役立つことを願う。
仏教美術の人気
美術には様々なジャンルがあるが、仏教美術はとりわけ奥が深く、興味深い分野である。仏教美術をテーマにした展覧会には長蛇の列ができるほど観客が集まるし、カルチャーセンターなどの「仏像の見方」といった講座も常に人気が高い。なぜ仏教美術は多くの人の気持ちをひきつけるのだろうか。
「美術」とは「形」によって精神・思想を表現したものであり、すぐれた美術とは、それに接した人に魂の揺り動かされるような精神的体験(激しい感動ばかりでなく、深い安らぎといったものも含め)を与えてくれるもの、ということも可能だろう。言語だけでは表現しきれない人間の精神の営みが確かに存在し、それにふれることに魅力を感じ、喜びをおぼえる多くの人がいるということは確かである。
理解のための知識
「仏教美術を理解したい」という想いをいだく人は多い。しかし、美術、殊に宗教美術を理解するためにはさまざまな知識も必要になる。基本的なところでは、主題や背景となる教義についての知識であろう。ある仏像や仏画がどのような仏教の教理に基づいて造られているか、ということが、一般に関心の対象となる。
しかし、美術の理解はそれだけにとどまらない。作品は、あるテーマ、たとえば仏像の場合「慈悲」とか「智慧」を、形によって表現していると見ることができる。制作者がどのような造形表現でそういった内容を表わすことに成功しているか、という点に意識が及ぶようになれば、理解はより深まるはずである。
制作者の精神的なメッセージを理解することが、過去の人間の精神的・思想的な営みを理解することにも通じる。
初の総合的な事典
一口に仏教美術といっても、アジアの各地、各時代ごとに極めて多様な展開を見せている。特定の地域・時代にとりわけ好まれた主題がある。あるいは同一の主題でも、地域・民族ごとにさまざまに異なった表現の特色が見られる。地域・民族・時代によって仏教の受容・理解の仕方がさまざまであったことを、今日残る遺構・作品から読み取ることもできる。
これまで美術全般を対象にした事典や、仏教美術の個別ジャンルの事典は刊行されているが、アジア全域にまたがる、仏教美術のあらゆるジャンルを網羅した事典というのは、前例がないはずである。
本事典では、インドに発祥した仏教美術がいかなる地域的・歴史的変遷をたどったかを、なるべく具体的な作品にふれながら俯瞰できるよう、項目の配列に工夫がされている。
アジア全域を俯瞰
たとえば、重要な尊像・主題に関しては、主項目の解説に続けてアジア各地・各時代の主要な作品の解説をおき、インドから日本に至る流れが概観できる。
「十一面観音」を例に取れば、インド・カンヘーリー石窟、中国・敦煌莫高窟、韓国・石窟庵、日本・聖林寺等、各地の代表的な十1面観音像の特色を通観することができる
主要な遺跡・寺院・博物館などについては、概説に続いて、代表的な所蔵品を解説し、全体像をとらえられるようにしてある。
「平等院」を例にあげると、主項目の解説に続いて「鳳凰堂」「平等院庭園」「雲中供養菩薩像」「中堂壁扉画」などの作品解説がおかれている。「法隆寺」の項目では、概要に続いて「法隆寺の建築」「法隆寺の彫刻」「法隆寺の絵画」「法隆寺の工芸」などの小見出しを立ててジャンル別に概観し、さらにその中に重要な作品の個別の作品解説がもうけられている。
さらに、巻頭には仏教美術の全体像がとらえられるよう、総説「仏教美術の展開」がおかれている。なお、巻末の索引は、見出し項目だけでなく、用語・寺院名・作品名・作者など、様々な形で必要な事項が検索できるように工夫してある。
研究者のみならず、仏教美術に関心をもつ多くの人に、広く利用していただければ幸いである。
(井上浩一郎)
B5判・1040ページ・上製函入り 34,650円(税込)
【東京書籍】〒114―8524 東京都北区堀船2―17―1
TEL03(5390)7531
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