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「現場」の可能性と魅力
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尾崎 新編 四六判 3150円(税込) 誠信書房( この本のページ)
「死にたい」「このような人生など生きる価値などない」「お母さんに会いたい」「なぜ、お母さんは私を迎えに来てくれないの」「介護に疲れた」「助けて欲しい」このような人たちの問いかけにどうするか。「現場」のあるべき姿や可能性を論じる。
本書のきっかけ
編者である尾崎氏は、ある社会福祉協議会の主催する研修会で80名の在宅介護支援センターの職員から日々の実践に対する生々しい思いを聞かされた。彼ら彼女らの訪問場面、相談場面はまさに「修羅場」の連続だった。介護という仕事を通して、他者の家族・生活のなかに入っていくとき、介護者は利用者と家族が激しく対立する場面に向き合わねばならない時がある。そのような場面では怒り・うめき声、あきらめ、そして語ることをあきらめた深い沈黙等が交錯する。
また、利用者・家族から「助けてほしい」と懇願され、同時に「お前なんかに、私の家に土足で踏み込まれてたまるか」という拒絶をつきつけられることもある。
さらに必死でかかわるなかで、その家族の1人1人の重い歴史に気づき、絶句することもある。あるいは援助すべき課題が山ほどあるのに、制度や個人の力の限界に直面し、無力さに圧倒されることも少なくない。
多くの研修会参加者が「毎日、仕事を辞めようと思う。しかし辞められない自分もいる」と葛藤を語っている。社会福祉現場には苦しい実践の連続があり、投げ出したくなるような現実がある。しかし同時に、編者は彼ら彼女らの葛藤、矛盾、苦しさを聴きながら、そこに「迫力」のようなものを感じ始めていた。
ほとんどの参加者が初めて出会ったばかりであるのに、互いに生きたことばを使い、自分を開示していた。
そこでは仲間の苦闘する体験に耳を傾けあう姿もみられた。これらの姿に接し、編者はこれこそ現場の力であると感じるのである。
その力とは、現場での矛盾や葛藤、無力感や挫折感と毎日のように格闘しているからこそ、育てられている力であると考えるのである。
濃い対話・迫力ある言葉
本書の出発点ないし基礎がここにある。したがって「濃い対話」「迫力あることば」は本書の各章にも随所に見られる。現場の深さ、裾野の広さ、多層性が表われている。
それらは以下のようなさまざまな職域での記述にも窺える。
死と隣り合わせにある福祉事務所でのソーシャルワーク実践の現場。ドヤ街で働くワーカーの生々しい記録はきれいごとではすまない現実の重さと利用者と援助者の心の交流が伝わってくる。
福祉センターで療育相談員をしている臨床心理士の事例。援助の現場は真実で善であるという思い込みを持っていた援助者が、利用者の虚実ない交ぜの相談に翻弄されながら、真実の行方がわからなくなるという話。真実と善だけでは動かせない人の心の不思議さ、不可解さが浮かび上がる。
精神医療の現場で、苦しい空間を共有してきた仲間たちと解決に至らずとも対話することの意義。
保健所で働く保健婦である執筆者が、会ってももらえない利用者に、苦闘しながらも関わりを継続しようと努力し続ける姿。
26年間勤務した精神病院で、16歳から関わった女性に20歳で自殺された援助者の思い……。
病院のターミナル・ケアで働く看護婦が、よい関係を継続している患者ゆえに、その患者の迫り来る「死」から目を背けたいと思う人間的な葛藤。熱心になればなるほど苦しみが増すという矛盾……。
大学の教育の現場では、社会福祉という学問がもつ、「善であり正義である」という大前提に対して「普通」や「常識」でありたいとする。「偉いわねえ」という世間の人々の言葉の裏側に潜む矛盾に学生や指導教官が戸惑う姿や、それでも実習を通して変容していく学生たちの力強い姿。
精神障害者の作業所のさまざまな利用者が交流するバーでのやりとりや運動会の光景から浮かび上がる援助者と利用者の生々しい姿。
さらにこれらの現場を構築する制度の矛盾や学問としての社会福祉が現場をどう位置づけていくかという課題への提言。
本書はこのように、様々な職域での実に豊かな社会福祉実践の現場の姿が生き生きと描かれ、現場の変容が地域社会や人々と深く関わっていることを示唆してくれる。社会福祉に関心のある人やボランティアを志す人はもちろん現場で日々格闘する方々にぜひ読んでもらいたい。
誠信書房
〒112-0012 文京区大塚3の20の6
TEL03(3946)5666
FAX03(3945)8880
08.04.21 『台頭する中国の草の根NGO』
08.03.21 『フェルメールの秘密』『ルソーの夢』『レオナルドの謎』『ゴッホの魂』
08.02.21 『原典現代中国キリスト教資料集』
08.01.21 『エウクレイデス全集』[全5巻]
07.11.21 いまなぜ信金・信組か
07.09.21 『百人一首大事典』
07.08.21 『世界がキューバ医療を手本にするわけ』
07.07.21 (1)『いのちってなんだろう』 (2)『自分ってなんだろう』
07.06.21 『10代の心と身体のガイドブック』
07.05.21 新自由主義
07.04.21 大学での学び方―「思考」のレッスン―
07.03.21 南原繁の言葉
07.02.21 『吉野裕子全集』
07.01.21 藤沢周平に学ぶ―人間は、人生は、こうありたい……―
06.11.21 『ブラックバスを退治する』
06.09.21 「私を忘れないで」とムスリムの友は言った
06.08.21 『プロカウンセラーが読み解く 女と男の心模様』
06.07.21 憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本
06.06.21 復刻版 大宇宙の旅
06.05.21Dr.金田一&柴田理恵のことば診療所
06.04.21脱アイデンティティ
06.03.21農業技術事典NAROPEDIA
06.02.21アメリカの連邦財政
06.01.21舞台一阪神淡路大震災】全記録
05.11.21国際政治事典
05.09.21自然と人間リーディングス
05.08.21子ども図書館をつくる
05.07.21戦後史大事典
05.06.21愛する人がアルツハイマー病になった時
05.05.21子どもの英語学習
05.03.21マンガ 出張先は北朝鮮
05.02.21現代農業
05.01.21ナラティヴの臨床社会学
04.11.21「ひろさちやの祖師を読むシリーズ」全6巻
04.09.21安房直子コレクション全7巻
04.08.21写真でみせる回想法
04.07.21臨床心理学全書 全十三巻
04.06.21マキャベリ的知性と心の理論の進化論
04.05.21『サトラップの息子』『クレモニエール事件』『石、紙、鋏』
04.04.21夏目漱石原稿「道草」全三巻
04.03.21写真ものがたり 昭和の暮らし 全5巻
04.02.21育ちゆく子に贈る詩(うた)
04.01.21いきものをまもるシリーズ1 コウノトリのふるさと
03.11.21《花の詩画集》 花よりも小さく
03.09.21ダイナミック・メディシン 全七巻+別巻 完結
03.08.21大和の古墳I
03.07.21水をめぐる人と自然
03.06.21定本 手塚治虫の世界
03.05.21変わる家族 変わる食卓
03.04.21新英和中辞典 第7版
03.03.21餓鬼一匹
03.02.21魂の錬金術
03.01.21(図説)世界の歴史(1)「歴史の始まり」と古代文明
02.12.21耳をすまして
02.09.21ドイツの生涯学習
02.08.21星空散歩ができる本 南半球版
02.07.21仏教美術事典
02.06.21一日一書
02.05.21「現場」のちから
02.04.21検証―なぜ日本の科学者はむくわれないのか
02.03.21誰か死ぬのを手伝って
02.02.21アイデンティティとライフサイクル論
02.01.21認知意味論のしくみ
01.11.21(シリーズ身体とシステム)第1期全6冊
01.09.21国鉄・JR 列車名大事典
01.08.21ミステリー・リーグ