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機能不全の日本の科学界を解剖する
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サミュエル・コールマン著 岩舘葉子訳 四六判 2520円(税込) 文一総合出版( この本のページ )
私たちの将来がますます科学技術に依存しようとしている今、日本の科学研究全体が致命的な病に苦しんでいるとしたら? 本書は、科学関係者をはじめすべての日本人へ警鐘を鳴らすと同時に、日本がその病を克服するための道を示している。
海外から見た日本の科学
初めて本書の原著について知ったのはイギリスの科学雑誌『ネイチャー』の書評だった。書評の見出しには「日本の科学構造の変革は進んでいるか?」。『ネイチャー』のような一流国際誌の書評欄で日本の基礎科学の現状をテーマにした本が取り上げられるのはごくまれだ。外国の研究者たちの目に、日本の科学や科学界はどのように映っているのだろう? そこに興味を持ったのが、本書にかかわるきっかけだった。
徹底的な参加観察
本書は日本の科学界の職階制や、人材流動性、助成金配分などの問題点を、アメリカ人社会学者が分析し、科学者の才能と意欲を効率的に生かせるシステムとはいかなるものかを考察したものだ。読んでまず驚かされたのは、外国人である著者が、日本の科学界の構造はもとより、さまざまな立場にある科学者たちの心理や、全体の雰囲気のような掴みどころのないものまでを描写しえている点だ。日本では世間一般には科学界の現状はほとんど理解されておらず、科学者ですら自分の周辺の事情しか見えていない場合もあるのではないだろうか。日本の科学界の全体像を深層まで洞察するために、著者は日本の大学や国立研究所の研究室に1年滞在して参加観察し、現場の多数の科学者へのインタビューやアンケートをおこなっている。加えて1990年から9年間のあいだ、何度も来日してデータを追加し徹底的に調査している。それによって、この分野の本質的な問題点をあまねく拾い上げ、多角的に現状改善の方向を示唆することに成功している。
科学者たちの生の声
日本の科学者たちが著者との面談で赤裸々な告白をしているのはとりわけ興味深い。むしろ著者が外国人であり科学界にも利害関係のない立場にあることが、かえって警戒心を解かせたのだろうか。その暴露話のなかに、科学者たちがのっぴきならない事情に何重にも取り巻かれながら、なんとか研究を続け成果を上げようともがいているイメージが浮かび上がってくる。彼らの生の声が伝えるさまざまな人間ドラマの集積が、著者が集めた客観的データとあいまって、複雑にからまりあった多数の問題を抱える科学界の全貌を、見事に描出している。はじめて翻訳文の原稿を読んだとき、充実した内容への感激と日本語版への期待で、何度も胸が高鳴った。
さらに多くの志を集めて
原著には多数の科学者の発言が実名入りで引用されている。なかには内輪の事情や公表しにくい意見を明かしたものもある。原著者は原著の出版時に、実名入りの人物全員に了解を取っていたのだが、日本語版を出すとなれば改めて了解を取り直し、本人の希望があれば匿名にしたり、一部内容を削除するといった修正をしたいという考えだった。そこで編集にあたっては引用されているたくさんの科学者に原稿の一部を送って読んでもらい、名前の表記や書き方について希望を聞いて、引用されている本人の納得した形で発言が公表されるよう細心の注意を払った。事前には、もし発言をトーンダウンしたいという希望が多く出てきたら、本書のインパクトが弱まってしまうのではないかと心配でもあった。しかし実際に原稿を送ってみると、自分の発言をトーンダウンしたいという希望はほとんど出ずに、1人の例外もなく本書の編集に惜しみない協力を申し出てくれた。それは、ありがたいと同時に意外だった。それだけ、科学者の多くが現状に対するやり場のない憤懣を抱えていて、多少のリスクを背負ってでも、問題を世間に訴える機会を歓迎しているのだと痛感した。
さらに日本語版では、いま深刻な問題となっているいくつかの点について生化学界の重鎮3人にインタビューし、記事にまとめて追加収録している。インタビューに応じてくれた科学者の1人、早石修博士は、「文部科学省にいくら働きかけても、巨大な壁にぶつかっていくようなもので、びくともしない」とため息まじりに仰りながら、記事の校正に熱心にご協力くださった。早石博士をはじめ多数の科学者の思いが注ぎ込まれて完成した本書が、日本の科学のあり方をめぐる世論にも専門家の議論にも、一石を投じるものになればと願っている。
文一総合出版
〒162-0812新宿区西5軒町2-5
TEL03(3235)7341
FAX03(3269)1402
08.04.21 『台頭する中国の草の根NGO』
08.03.21 『フェルメールの秘密』『ルソーの夢』『レオナルドの謎』『ゴッホの魂』
08.02.21 『原典現代中国キリスト教資料集』
08.01.21 『エウクレイデス全集』[全5巻]
07.11.21 いまなぜ信金・信組か
07.09.21 『百人一首大事典』
07.08.21 『世界がキューバ医療を手本にするわけ』
07.07.21 (1)『いのちってなんだろう』 (2)『自分ってなんだろう』
07.06.21 『10代の心と身体のガイドブック』
07.05.21 新自由主義
07.04.21 大学での学び方―「思考」のレッスン―
07.03.21 南原繁の言葉
07.02.21 『吉野裕子全集』
07.01.21 藤沢周平に学ぶ―人間は、人生は、こうありたい……―
06.11.21 『ブラックバスを退治する』
06.09.21 「私を忘れないで」とムスリムの友は言った
06.08.21 『プロカウンセラーが読み解く 女と男の心模様』
06.07.21 憲法が変わっても戦争にならないと思っている人のための本
06.06.21 復刻版 大宇宙の旅
06.05.21Dr.金田一&柴田理恵のことば診療所
06.04.21脱アイデンティティ
06.03.21農業技術事典NAROPEDIA
06.02.21アメリカの連邦財政
06.01.21舞台一阪神淡路大震災】全記録
05.11.21国際政治事典
05.09.21自然と人間リーディングス
05.08.21子ども図書館をつくる
05.07.21戦後史大事典
05.06.21愛する人がアルツハイマー病になった時
05.05.21子どもの英語学習
05.03.21マンガ 出張先は北朝鮮
05.02.21現代農業
05.01.21ナラティヴの臨床社会学
04.11.21「ひろさちやの祖師を読むシリーズ」全6巻
04.09.21安房直子コレクション全7巻
04.08.21写真でみせる回想法
04.07.21臨床心理学全書 全十三巻
04.06.21マキャベリ的知性と心の理論の進化論
04.05.21『サトラップの息子』『クレモニエール事件』『石、紙、鋏』
04.04.21夏目漱石原稿「道草」全三巻
04.03.21写真ものがたり 昭和の暮らし 全5巻
04.02.21育ちゆく子に贈る詩(うた)
04.01.21いきものをまもるシリーズ1 コウノトリのふるさと
03.11.21《花の詩画集》 花よりも小さく
03.09.21ダイナミック・メディシン 全七巻+別巻 完結
03.08.21大和の古墳I
03.07.21水をめぐる人と自然
03.06.21定本 手塚治虫の世界
03.05.21変わる家族 変わる食卓
03.04.21新英和中辞典 第7版
03.03.21餓鬼一匹
03.02.21魂の錬金術
03.01.21(図説)世界の歴史(1)「歴史の始まり」と古代文明
02.12.21耳をすまして
02.09.21ドイツの生涯学習
02.08.21星空散歩ができる本 南半球版
02.07.21仏教美術事典
02.06.21一日一書
02.05.21「現場」のちから
02.04.21検証―なぜ日本の科学者はむくわれないのか
02.03.21誰か死ぬのを手伝って
02.02.21アイデンティティとライフサイクル論
02.01.21認知意味論のしくみ
01.11.21(シリーズ身体とシステム)第1期全6冊
01.09.21国鉄・JR 列車名大事典
01.08.21ミステリー・リーグ